COLUMNオリジナルの高級手持ち花火が話題、コロナ禍でも売上を伸ばし続けた老舗の手持ち花火専門会社「井上玩具煙火株式会社」
島田市中河町にある井上玩具煙火株式会社は、創業約100年の歴史ある手持ち花火製造会社。
メディアでも度々紹介されるなど話題となり、コロナ禍でも順調に売上を伸ばしてきたその取り組みについて、企画開発室長の井上慶彦さんにお話を伺いました。
Q.井上玩具煙火株式会社さんはどんな会社ですか?
※以下、井上玩具煙火さんのコメントは緑色で記載してあります※
手持ち花火の製造・販売をしている専門メーカーです。
創業は昭和元年で、当時は井上商店として駄菓子屋や玩具と共に、手持ち花火などの玩具煙火の販売をしていました。その後、手持ち花火の製作を始め、井上玩具煙火株式会社と改めました。それ以降はずっと手持ち花火を作り、国内外に出荷しています。
手持ち花火専門の会社というのは初めて聞きました
よく花火と言うと、皆さんは打ち上げ花火を想像されると思います。打ち上げ花火の製造会社は多くありますが、手持ち花火を専門にしている会社は数が少ないんです。それも小規模な会社がほとんどなので、日本では当社がトップという誇りをもっています。
しかしトップとは言っても、競合相手として海外から安価な手持ち花火が日本の市場に入ってきています。これまでは技術力で勝っていましたが、今後は海外でも品質を上げてくることが予想されますので気が抜けません。
Q.井上玩具煙火さんの手持ち花火の特長を教えてください
消費者が花火を初めて見たとき、まずはその見た目の美しさやカラーバリエーションの多さ、形などで楽しんでいただけるように工夫しています。
そして燃焼時間の長さも特長です。輸入ものの花火は10~20秒で燃え終わってしまうものが多く、味気なく感じることもあるかと思います。当社では、種類にもよりますが最低でも40秒から1分ほど燃焼し、できる限り長い時間楽しんでもらえる製品を作っています。
もともと日本に花火が伝わってきたのは江戸時代、徳川家康が駿府城で見たのが最初だという説があります。それまで火薬は銃など戦いのために使われてきたものでしたが、時代が移って花火という娯楽のために使われるようになりました。
多くの人々を楽しませるものに役割が変わった火薬の使い方を、当社の手持ち花火を通して伝承していきたいと考えています。
Q.コロナ禍の中で新しく取り組んだことはありますか?
当社のホームページを作成して、その中でのみ販売する自社ブランド花火をリリースしました。
それまでは卸売りがメインでお客様と直接やり取りすることはありませんでしたが、特別感のあるオリジナルな商品を通して、国産の手持ち花火の良さをもっと知ってもらいたいとの思いから作りました。
Q.自社ブランド花火とはどんな花火ですか?
2020年6月に「義助(よしすけ)」、翌年に第二弾として「結華(ゆっか)」という花火をリリースしました。
誰かに贈りたいと思われるような高級感のある商品となっています。
かつて島田にいた刀鍛冶の名工にあやかり名付けられた「義助」
義助は刀をイメージしたシックな佇まいで、昔ながらの伝統的な火の色合いを残しつつ現代的なきらびやかな火花を組み合わせて、現代調の駿河伝統手持花火を表現しました。
それに対し結華は花をイメージして、ピンク・赤・白といった華やかな色合いの火花が楽しめる花火で煙の少ないのが特長です。
牛乳パックの再生紙やリサイクルできる紙を使ったパッケージを使用していて、スタイリッシュなだけでなくSDGs的観点からも適したものになっています。
島田市の花・薔薇の香りがパッケージについた「結華」
元々はコロナ禍前から企画していたものでしたが、プレスリリースが2020年6月とコロナ禍の最中になりました。当時は正直なところ、発売するタイミングとしては最悪な状況だと思っていました。
しかし、全国各地で花火大会が軒並み中止となり、遊びが制限されていた時期だったこともあり、家で花火を楽しむ人が増えて手持ち花火の需要が高まったんです。
当初考えていたのとは逆に、お客様に関心を持ってもらえるタイミングとなりました。
Q.お客様からどんな反応がありましたか?
新聞やテレビ番組などで紹介されたこともあり、問い合わせがコンスタントに入るようになりました。コロナ禍の中でもお中元や引出物、また友人や家族に贈っておうち花火を楽しんでもらったりと全国各地からご注文いただきました。
それまで売上はやや右肩下がりでしたが、コロナ禍を経て以前より約10%ほど全体的に売上が伸びてきました。
大きな反響があったんですね!
お客様に好評をいただきましたが、当初社内からは単価が高すぎることに対する不安の声がありました。1本当りがこれまでの花火の3~5倍ほどの価格になるので、製造担当からは本当に売れるのか?といった疑問の声が出ていました。
しかし最終的には、高付加価値のある商品だと納得してもらい販売することができました。
Q.今後はどのような仕事をしていきたいですか?
更に新しい商品づくりにチャレンジしていきたいと思います。
今考えているのが、サステナブルな商品づくりです。
各企業さんから出る廃材、例えば島田だと茶殻なんかを使って花火を作ることができたら面白いなと。まだ企画段階で難しいとは思いますが、新しい効果が出たらいいなと思っています。
Q.この記事を見た人へメッセージをお願いします
島田市に業界トップの手持ち花火専門の会社があるんだと知ってもらえたら嬉しいです。職人が一本一本こだわって、暑い日も寒い日も外で作り続けている手持ち花火なので、お店で花火を見たときに、当社の商品に気付いてもらえたら更に嬉しいです。
【事業所様へ】
一緒に新しい取り組みをしてくれる方がいましたら、気軽に声を掛けてください。新しい商品づくりのために廃材を使っていいよという企業さんや商品材料やパッケージに関わる企業さんなど大歓迎です。OEMなどもぜひご相談ください。
井上玩具煙火株式会社の花火はスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストア、量販店などで販売されています。また、事前連絡をいただければ島田市中河町にある本社でもご購入いただけます。
自社ホームページでは、限定販売の義助や結華を始め人気商品を販売していますので、ぜひ一度ご覧ください。