COLUMNコロナの苦境をステップアップの原動力に「有限会社岩倉溶接工業所」

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昭和48年創業の有限会社岩倉溶接工業所さんは、さまざまな分野の金属加工をおこなっています。

日々の積極的な取り組みで、コロナ禍の苦境を会社がステップアップする力に変えたという、2代目代表取締役の岩倉義典さんにお話を伺いました。

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Q. 岩倉溶接工業所さんの事業概要を教えてください。

※以下、岩倉溶接鉱業所さんのコメントは緑色で記載してあります※

食品製造機械部品や、精密洗浄機部品、航空宇宙関連の機械部品、医療機器に使われる部品などの金属加工を行っています。また近年は金属製の雑貨などオリジナル製品も開発しています。

幅広い分野の金属加工をされているんですね。

当社は、静岡県内でいち早くレーザー加工機械を導入し、レーザーによる最先端の加工技術と職人の熟練した板金・溶接技術を掛け合わせて、高い品質が求められるさまざまな専門分野の部品製造や、これまで難しいとされた金属素材や、形状、色彩の加工を行っています。

幅広い分野のニーズに応えるため、各分野の工業系の組合や、研究会、コンソーシアムにも参加して、他社から優れたノウハウを吸収したり、専門機関や大学などとの連携を深めています。

Q.コロナ禍で新たに取り組んだことはありますか?

2020年4月に浜松医科大学と共同で「COVID Intubation Umbrella(コビッド インチュべーション アンブレラ)」という、医療従事者向けの飛沫防止器具を開発しました。

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Q .開発するきっかけはなんですか?

当社が2012年から参加している、浜松を中心とした医工連携の協同組合「HAMING」を通じて、浜松医科大学の医師から「コロナ患者への処置を施す際に、医師や看護師への感染を防ぐための飛沫防止器具を製作してほしい」という依頼があったんです。

当時は新型コロナの感染拡大の影響で、売上が激減していた時期でした。

医療分野は不況に強いと言われていましたが、感染防止のため医療機器メーカーの営業が病院に入れず、コロナ患者の治療優先で他の手術が延期されたことから、当社の部品が使われている医療機器が売れなくなってしまったんです。

それまで1か月に20台売れていた部品が、3か月に20台売れるか売れないか......という苦しい状況のなかで、依頼をいただきました。

コロナ禍前から各分野にネットワークを広げていたことで声がかかったんですね。開発で苦労されたことはありますか?

構造がシンプルな器具で製作自体は難しくなかったものの、一刻も早く製品が必要な状況だったので、対応にスピードが求められました。

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医師から金属フレームと使い捨てのビニール袋を想定した器具の図面を受け取り、2日で1/2サイズの模型サンプルを作り、その2日後にはアルコール消毒に強いステンレス製の製品を完成させました。

さらに商品化に向けて、軽量化と耐久性の両立やコストと販売価格の折り合いを改善し、4月20日に依頼を受けてからゴールデンウィーク明けには他の病院にも販売したんです。

そんな短期間で完成できたんですね。

短期間での完成が実現できたのは、金属加工と医療現場を知る私たちだからできたことだと感じています。

器具に必要な安全性など、現場を知らなければ必要以上に時間がかかっていたと思います。

また金属以外の素材も、他業種との交流を広げていたので、すぐに対応できました。

完成した器具は広くシェアされた方が良いことから特許を取得しなかったため、会社の売り上げには大きく影響はありませんでしたが、「当社だからできた」という手応えを感じ、これまでの部品製造とは違う「作ったものが世の中に貢献する」という経験は会社にとって大きかったですね。

Q.今後はどういった取り組みをされますか?

飛沫防止器具の開発以降、新しいチャンスを掴むには自分達の可能性をさらに広げることが必要と考え、5つのチャレンジプロジェクトを進めています。

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どういったプロジェクトでしょうか? 

端材活用、技能PR、設備の高度利用、環境改善、納期管理プロジェクトの5つです。

金属の加工時に出る端材を使ったオリジナル商品開発「端材プロジェクト」では、若手社員が主力となって開発から商標登録まで挑戦しています。

「TANZAI®」というネーミングで発売されたアイスコインは、ふるさと納税の返礼品にもなっています。

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技術PRでは、木製より軽い金属製のギターなどを製作して展示会で披露したり、コンテストへの出品や、テレビで紹介していただいています。「1年に1回テレビに出よう」を目標に、ユニークなモノづくりやWEBでの積極的な情報発信を行うようになりました。

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設備の高度利用は、既存の機械をこれまでとは違う使い方をしてオリジナル加工ができないか、これまで以上のパフォーマンスを発揮できないか、職人が日々模索をしています。

展示会では「同じ機械を使っているのにこんな加工ができるのか」と驚かれることもありますね。

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他にも、環境改善は「現場をショールーム化する」をスローガンに工場内をいつも綺麗に保つことで「この工場なら依頼したい」「こんなきれいな溶接屋はない」と思って貰えるようにする取り組みです。納期管理プロジェクトでは、工程管理のソフトを使って社員一人一人ではなく会社全体で納期の遅れを防止する取り組みです。 

若手社員のアイデアを積極的に採用していると聞きました。 

若手社員ならではのアイデアをどんどん歓迎したいと思っています。社員には積極的に自分達のアイデアを形にしていってほしいですね。
実際に端材プロジェクトでは、商品開発、販売、ブランディング、PRなど初めてだらけのことに挑戦して形にしてくれました。

コロナ禍以降は、展示会のレイアウトも20代の社員に考えて貰っています。

また若手育成のために働きやすい環境づくりも進めています。

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専門家を呼び、社員それぞれの個性を知る性格診断を実施したり、研修会を開いて話しやすい環境を考えるなど、お互いを尊重しストレスの少ない職場作りに努めています。

Q.会社全体として今後のビジョンをお聞かせください。

溶接のイメージを変えていきたいです。

昔は他社との差別化は設備でしていました。しかし現在はどこの会社も設備が横並びで変わりません。

これまで金属加工業者はメーカーから受注する待ちの姿勢でしたが、これからは他社と差別化するためにも、自分たちから提案していかなければならないと考えています。

そのためただの職人ではない、最新の設備を使える知識と熟練の溶接技術を備えた「先端職人®」を育成し、同じ設備でも他社に負けない技術力と提案力をつけていきたいです。

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岩倉溶接所さんの取り組みで溶接業界に興味を持つ方も多そうですね。

メディアでの技術PRによって当社を知ってくれた企業がいたり、入社してくれた社員もいます。

今後も積極的な取り組みを続けて、若い人たちが溶接業界を知って当社に興味を持ってくれたら嬉しいですね。

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